コワーキングスペース運営と地震を通じて、地方で思っていること。

去年の9月に初めて東北を中心に起業支援、ファンド運営を行なっている一般社団法人MAKOTOの竹井さんに熊本にお越しいただいて以来、本当の復興や地方の未来について考え続けてきました。竹井さんと初めてお会いした時に感じたことは、まさに「平成のサムライ」と言っても過言ではないということです。様々な分野で志を持って行動されている人がいますが、起業支援という枠組みにおいては、日本でここまで本気で取り組まれている人はいないのでは稀だと感じています。最近では、失敗経験者を対象としたファンド匿名組合出資という手法を用いたシェアファンドを設立されています。


今回竹井さん企画の『(※)熊本・東北の復興リーダー交流プログラム』に参加させていただいて確信したことは、「志」の連鎖(カタカナ表記だとオープンイノベーションでしょうか)は不可欠だということです。

私は2014年から熊本でコワーキングスペースという日本では新しい形態の施設の立ち上げと運営に携わってきました。最初は本当に手探りで、書籍や国内外の先行事例などを勉強しまくりながら走り出しました。簡単に言うと空間を共有することで、個々人が出会い、コラボレーションが生まれることこそ、コワーキングスペースの価値なんですが、

「それってどうやんの?どうやったらうまくいくの?熊本にあったコワーキングスペースって?」と日々模索しながらの運営を行なってきました。


単に空間を共有するだけではなく、コミュニケーションやコラボレーションのキッカケを提供することがコワーキングスペースの真髄ではないかと思っています。

ただお察しの通り、人と人のマッチングはそう簡単ではありません。それぞれの思想ややっていることを理解し、何を求めているかをデータベース化しておき、日々の出会いの中でマッチする話を聞いた時に双方をお繋ぎするということは膨大な時間とパワーが必要です。そう、これって人間神経衰弱(トランプゲームの)なんです。しかも言うまでもなく、人間は記号と数字以外の複数の要素を含んでおり、その関係の間に入ることは容易ではないです。

この人とこの人!!という本当の意味でのマッチは、なかなか難しく、これまでも自分なりに「これは!」という体験も2年間で数件程度です。しかし、お繋ぎした(ご紹介させていただいた)両者が、それぞれの強みを生かし、物事を進めていく光景は大変清々しいものがります。

では私がなぜ、コワーキングスペースに携わることにしたかについて少し説明しておきたいと思います。それは単にオシャレとか面白そうとか表面的なことは一切なく、地方や日本が抱えている経済低迷という最大の課題のソリューションのための一つのチャレンジになると考えたからです。ちょうどそんなことを考えていたタイミングで、現在の会社立ち上げのお話を知り、立ち上げメンバーにジョインさせていただいたことはジャストミートだったと思います。

私は大学で経済学(経営/会計)を専攻しました。目的は単純で、どうすれば人が幸せに生きれるかという問いに対して、日本社会では”経済”を無視することはできず、どうすればそんな世界が作れるかと常に考えて生きてきました。日本では統計に上がっているだけでも年間約3万人もの人が自殺をしています。様々な要因があるのは事実ですが、中でもこの経済というものが大きな影響力を持っていることは間違いなさそうです。そして個人と経済を結びつけるものこそ、仕事であり、労働です。(日本三大義務の一つですね。)

個々人がいかにその人に合った働き方ができるかという大きな命題こそ、避けることのできない問題ではないでしょうか。もちろんこの命題は、ほとんど全員がステイクホルダーであり、一挙に解決できるものではありません。


3.11が発生した当時、私は大学生でしたが、報道されている日本で起きている”現実”を自分の目で見て感じたいと思い、大学のメンバー協力の元、ボランティアというかたちで宮城県を訪問しました。地震や津波、原発による影響は甚大で、言葉を失いました。しかし、現地の方々と交流する中で確実に「生きる力」を見せつけられました。

最も印象的だったエピソードは、避難所にいるおばあちゃん達が、津波によって使い道のなくなった大漁旗を活用して帽子や鞄などのグッズを手縫いして、販売していたことです。避難所で手縫いをしているという光景は一見ほのぼのとしたものと感じるかもしれませんが、実はそこには「生業/生きるための自主的な意志」がありました。しかもおばあちゃんがネット販売を駆使して受注生産してたんです。

その時既に「志」や「主体性」が人生においていかに重要であるかを痛烈に感じさせてもらったと思います。今回東北を訪問し、よりビジネスライクな方々(地域に対しアツい思いを持った事業者)と交流、ディスカッションさせていただきましたが、軸としては当時と変わっておらず、重要なのは個々人がいかに「主体的に生きるための行動を起こすか」ということに尽きると思いました。今回印象的だったのは、「生かされている人間」として「自分にしかできないこと」が何なのかを突き詰め、即行動に移している姿は日本の誇りではないかとすら感じました。今回の #東北でよかった 騒動も、あまりにもスピーディかつイケてる発想で本当に驚かされました。

繰り返しますが、コワーキングスペースという空間でできることの一つは、前述にもある「人と人を繋ぐ」ということです。事業者を支援するための手法はいくつかありますが、目に見えないソフト面は答えがあるわけでもないと思っています。そしてこのコミュニティづくりという行為は、創業間もない人にとっては必要かつ非常に効果的な一方、可視化(ビジネス化)が難しいという点は身に沁みているところです。

現状としては、目に見えない価値を作るということは大変なエネルギーを要し、それゆえにやりがいは非常に大きいなぁという感じです。もちろん、まだまだできていないことも多々あり、日々トライアンドエラーでしかないのですが、毎日多すぎる程の貴重な経験をさせていただいています。これまでイベントや施設運営の中で数え切れない程の人とお会いすることができたのもコワーキングスペースだからこそだと思いますし、一つずつ、それぞれの人に恩返しができればと感じています。

不特定多数の人が行き来するという意味ではターミナルのような、オープンでフラットな場づくりの中で、コミュニティが育っていくための雰囲気づくり、環境整備こそ、コワーキングスペースにできることだと考えています。


最後に

私がコワーキングの概念を知った瞬間、日本初のカンパニー(株式会社/諸説あり)でもある亀山社中の立ち上げを手がけた坂本龍馬を連想しました。薩摩と長州という集団の共通理念をしっかりとまとめ、同盟まで持っていったことで知られています。ビジョンを掲げ、同じ方向を向いている人々をまとめるという行為としては、歴史上で偉大なマッチングだと思います。

地方の事業者にもこれを当てはめることができれば、必ず何かが変わると信じています。

ここ数年で感じていることを一言で言うと、「熊本には仕事がないから」とか「熊本では好きなことはできない」などの言葉を受け入れた上で、できるところから変えていくしか、熊本の未来はないのではないかと思います。そして「肥後の引き倒し」という悪習をひっくり返し、地方のプレイヤーが一丸となり、”株式会社くまもと”という視座の元、手を取り合うことで、子供たちに未来のバトンを渡して行きたいと思います。

では、誰がやるのか。それは地域で生きる私たちでしかありません。東北の方とお話していて共感したのですが、地域では「誰かがやってくれる」と考える受け身の人が多いということです。これは、リスクを取らない姿勢にも繋がっていると思います。確かにリスクは取りたくないものですが、もし分散できるコミュニティがあれば、一人のリスクは抑えることができるのではないでしょうか。

震災という予測不能のクライシスは多くの傷を残し、多くを奪います。ただ逆に気付かされることも多かったはずです。普段はあまり気にしないことでも、実は致命的に大事だったり、もうちょっとこうだったら良いのにと感じることが浮き彫りになるという側面もあるかと思います。

おそらく、誰もやってくれないことこそ、私たち一人一人が(たとえ小さくても)やっていく意味があり、それこそが未来づくりなんだと思います。

芸人のブルゾンちえみさんは「待つの。」で話題になっていますが、地方では「待つ」より「行動」だと思います。これまでお世話になってきた人に対して恩返しするなら、行動です。


「工藤が行動」という字面だけ見ると、ちょっと危なめですが、ここは北九州ではなく、熊本です。


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